終点、池袋

フィクション交じりのノンフィクション

EPISODE-5 シンプル

受傷から12日目。

 

仕事が忙しかったが半日休暇なら取れそうだったので

半休を取り紹介先の病院へ。

 

正直自分の心は

9割くらい手術しない方向で決まっていた。

 

このままポパイとしてホウレン草ロードを歩む事への

最後の確信を得るつもりで病院に向かった。

 

「手術しなくても8割程度力は戻るので大丈夫ですよ」

 

「プロでもない限り手術しませんよ」

 

「えぇ!?手術!? 大袈裟だねー!クスクス」

 

そんな言葉を想像していたのだが

受診を終え 先生が言った言葉は

 

「手術を推奨します キリッ」

 

であった。

 

「手術すれば以前のように二頭筋を使えるようになる」

「逆にやらない理由は何かあります?」

 

手術しないでも

それなりにクライミングも生活も出来る

とは思うけど治せるなら治した方が良いじゃん

と言う事である。

 

なぜそんな単純な事に気づかなかったのだろう。

 

手術のリスクやらお金やら

復帰までの不自由な期間やら思う所はあるけど

治せるなら治したい方が良い。

 

「手術します キリッ」

 

私はすぐに答えた。

 

あぁなんて晴れやかなのだ。

霧が晴れたようにスッキリとした頭の中。

答えはいつだってシンプルなのだ。

 

すると先生はこう言った。

 

「手術出来るかは検査しないとわかりません」

 

!?

手術したくても出来ないとかあるの!?

 

この先生

思わせ振りな小悪魔スタイルなのであった。

 

おじいちゃんの癖して私の心を弄ぶとは

さすが評判が良いだけあるなと思った。