終点、池袋

フィクション交じりのノンフィクション

EPISODE-36 手術からもうすぐ半年

早いもので後少しで手術から半年が経つ。

 

手術前

何となく復活まで半年くらいかかると思っていたけれど

ある意味では合ってるし

ある意味では間違っているように思う。

 

今後手術をされる未来のポパイ達への参考までに

とりあえずクライミングが出来ると言う意味では

3ヶ月かからないくらいで復帰出来る。たぶん。

 

元の実力にもよるけど

3グレードくらいの下の課題であれば

とりあえずは取り組めると思われる。

(普段取り組んでいたのが初段なら3級くらい)

 

厄介なのは2級くらいの課題を登れたりすると

もう誰も怪我人としては扱ってくれない事だ。

 

平気でランジする課題とか誘われる。

 

ただ 長いのはそこからで

ライミングが出来ていない期間分のリハビリに加え

恐怖心の克服 手術箇所の違和感への慣れ

特定の痛みが出る体勢に対しての継続的なリハビリ

などなど

 

完全復活までには沢山の課題があるのだ。

 

それらを克服し

怪我する前とほぼ同等くらい登れるようになるまでは

やはり手術から半年くらいはかかると思う。

 

登れる時間がどれだけ作れるかによって

大分変わってくると思うけど。

 

こうやって書いていると

辛くもどかしい日々を過ごしているかのようだけど

現実は真逆。

 

特に最初の3~4ヶ月くらいは

ジムに行く度に毎回強くなっていく感覚があり

めちゃくちゃ楽しい。

 

現実は元の力に戻っているだけとは分かっていても

毎回強くなる感じは長年クライミングを続けている程

味わえないものだ。

 

そんなこんなで

もはや誰も見ていないであろうこの連載も

そろそろ最終回を迎えそうである。

 

 

 

 

 

 

EPISODE-35 浮身

ライミングの調子は日に日に良くなっていた。

 

しかし来る日も来る日も

6mmで離陸出来る事はなかった。

 

指皮が薄いのが原因なのかと思い

指皮が比較的ある時にチャレンジするもダメ。

 

ある程度登ってから触っているのが良くないのかと思い

ジム到着後 すぐにチャレンジするもダメ。

 

本当に断裂前は浮けていたのだろうか。

 

時が経ち 木が劣化してBeast makerが

6mmより薄くなっているのではないだろうか。

 

か弱き自分を受け止められず

現実逃避ばかりを頭に思い浮かべていた。

 

そんなある日。

 

ジムで体重を計っている人がいたので

流れで自分も体重計に乗ってみた。

 

そう言えばしばらく体重を計っていなかった。

 

前に体重を計った時は

確か62kgくらいだった気がする。

 

どれどれ。

 

 

66.9kg。

 

 

中学生の時「修羅の門」と言う漫画が好きだった。

 

簡単に言うと強そうな奴を探して倒して

地上最強を目指す漫画だ。

 

その主人公 陸奥九十九のプロフィールが

170cm 66kgだった。


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当時 体重58kgくらいだった自分は

九十九と同じ体重66kgになれば強くなれると思い込み

晩御飯を食べた後 寝る前に

スーパーカップの豚骨味とライフガード500ml

ベビースターラーメンをひたすら摂取し続け

体重66kgを目指していた。

 

けれども中学生の新陳代謝は凄まじく

どうしても64kg以上にはなれなかった。

 

時が過ぎ

遂に私は憧れの陸奥九十九と同じ体重になっていた。

 

 

と、ここまで下書きで書いたまま放置していた。

 

この文章を書いていた時から3週間くらいの時が経ち

普通に6mmで浮けるようになった。

 

ちなみに体重はほとんど変わっていない。

危うく自分の弱さを体重のせいにする所だった。

 

 

 

 

EPISODE-34 6mm

正式に運動OKと言われてから

それまでは遠慮していた負荷の高そうな動きも

少しずつ行うようになった。

 

ジムに行く度に日に日に登れるようになっている

そんな気がしていたとある日。

 

ふとジムに設置されている

Beast makerのMicrosが目に入った。

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ちなみに断裂前は

10mm=余裕で浮ける

8mm=まあ余裕で浮ける

6mm=死ぬ程本気で10秒くらい浮ける

4mm=来世に期待

と言った感じだった。

 

結構登れるようになってきてるし

むしろクライミング休んでたから指の調子も良いはず。

前と変わらないくらいにはぶら下がれるだろう。

 

そんな事を思いながら そっと6mmに指をかけた。

 

 

まだ足は地面についている…

 

しかし既に感じる指先の違和感…

 

全細胞が語りかけてくるッッ!

浮けるわけがないとッッッ!!

 

 

ま…まぁ久しぶりだし

今日は8mmで勘弁してやろうか…

 

何事もなかったかのように8mmに指先をうつし

いざTAKE OFF!

 

1秒!

 

2秒!

 

着陸!

 

無理!

 

逃れられない現実がそこにはあった。

EPISODE-33 卒業試験

「もう大丈夫そうですね」

「何かあったらまた来て下さい」

 

久し振りの診察

そして結果 特に問題がなかった事から

この日が最後の診察となった。

 

最後の診察は手術から81日目だった。

 

別れ際に先生が絵を描きながら

改めて今回どういう手術をしたのか説明してくれた。

 

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ふむふむ なるほど。(理解してない)

 

思えばこの先生に出会わなければ

手術をすると言う選択をしていなかったかも知れない。

 

大げさかも知れないが自分にとっては

後の人生を

ポパイとして生きるか元ポパイとして生きるかを決めた

重要な出会いであったように思う。

 

何度かの診察等を経て

冗談を言い合えるような関係となっていたので

最後はお互い涙を流しながら抱き合うくらいの

別れになる事を想像していたが

先生の目は信じられないくらいパサパサに乾いていた。

 

先生ありがとう。

 

そして診察の後は

こちらも久し振りとなるリハビリに向かった。

 

一通り腕の可動域を確認した後に

椅子に座らされ両腕を水平に開くよう指示される。

 

「では…いきますよ…」

 

「ふんっ!」

 

!?

 

十分な説明もないまま

水平に上げた私の腕を

下げよう下げようと力を加えてくる理学療法士

 

「これは下げられないように抵抗しろって事ですか?」

 

「そ…そうです!ハァハァ!」

 

しょ…正気なのか?

腰を入れ 全体重を乗せ

理学療法士の額には脂汗が浮かび 指先は震えている。

 

こいつ…

紛れもなく本気で来ている!

 

必死に腕を下ろされないよう力を入れる私。

 

よく晴れた空の真下

湘南の片隅のリハビリステーション

拮抗する二人の中年男性。

 

その様はまるで 

片手悟飯vsセル かめはめ波状態だった。

 

 

膠着状態が続く中

頭の中ではこれまでのリハビリの日々が思い浮かぶ。

 

手術後

はじめて腕立てをして1回も出来なかったあの時。

 

激弱チューブも満足に伸ばす事が出来なかったあの時。

 

水泳オジサンにドヤ顔でマウントを取られたあの時。

 

 

「ハァハァ!」

 

力を入れ続ける理学療法士

 

 

なんと言う事だ…。

 

思い浮かべたリハビリの場面は全て自宅であり

リハビリメニューもほぼ自分で考えたものだった。

 

思えばこのリハビリステーションでは

手術後初期の頃に固くなった筋肉を

もみもみされたくらいの記憶しかない。

 

 

あ…あんまりお世話になってないッッ!

 

患者任せのリハビリの在り方に怒りが汲み上げてくる。

 


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うぉああああー!!!!!

 

肥大する私の筋肉!

 

 

「ギャフン」

 

手を離し退く理学療法士

 

電線に止まっていた鳥達が一斉に大空へと羽ばたき

リハビリステーションに静寂が訪れた。

 

 

「も…もう来なくても大丈夫そうですね…ハァハァ」

 

私は理学療法士との戦いに勝利し

病院でのリハビリもこの日で卒業となった。

 

ありがとう理学療法士。(社交辞令)

 

 

こうして私は上腕二頭筋長頭腱断裂における

手術療法に関わる全医療過程を終了した。

 

後は

まだ違和感の残る箇所のストレッチを地道に続けながら

運動の制限解除の日を待つのみとなった。

 

いよいよ

ライミング能力自体のリハビリがはじまるっ!

 

EPISODE-32 ピーチジョン

医者的に全力で運動して良いよ宣言が勧告される予定の

手術後13週目まで後1週間を切った。

 

年末からジムにはちょこちょこ通っており

無理をしない程度のクライミングをしながら

本格的にクライミングのリハビリを開始する予定の

13週目からに向けて少しずつ指の皮を厚くしている。

 

そんな指皮の現在の進捗がこちらである。

 

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そう。

むしろ削れて薄くなっているのだ。

 

そこまで登ってないのに

指先桃色片想い状態なのである。

 

ただホールドを触っているだけあって

ライミング自体は少しずつ登れるような雰囲気だけ

出始めている。

 

復活の日はそう遠くないのかも知れない。(願望)

 

 

 

 

 

EPISODE-31 66日

クローゼットの中

ライミング用のズボンを探す。

 

いつも取り出しやすい場所を陣取っていた

ライミング用のズボンは奥へと追いやられていた。

 

鞄にクライミングシューズとチョークバックを入れる。

 

ジムまでの通い慣れた道に少しの懐かしさを感じながら

ジムへと向かう。

 

袖からはみ出した指が少しかじかむ。

 

最後にクライミングをした時から季節は変わり

すっかり冬になっていた。

 

 

私は66日ぶりにクライミングジムに訪れた。

 

 

久しぶりに会うジムの人々と談笑しながら

ストーブでクライミングシューズを温める。

 

目的はあくまでも懸垂だったのだが

今クライミングをしたらどんな感じなのか知りたくて

一番簡単なアルファベット課題を登ってみた。

 

 

思いの外 腕は全く痛くない。

嫌な違和感もない。

 

手術する前に感じていた

腕が中途半端な角度になると力が入らなくなる感じも

とりあえずはない。

 

激しい動きをしたらどうなるのか分からないけど

無理をしない程度なら既にクライミングが出来そうだ。

 

思わぬ誤算に嬉しくなった私は

懸垂する事などすっかり忘れて

久しぶりのクライミングを堪能した

 

…のも束の間。

 

本来なら

やっぱり楽しい!クライミング最高!

とか言い出しそうな局面なのだが

私が感じたのはとにかく指の皮が痛いと言う事だった。

 

しばらくクライミングをしていなかった私の指は

すべすべのベイビー状態となっていたのだ。

 

とにかく

今後まともにリハビリクライミングをするにも

まず指の皮を硬くしないとお話にならない

と言う事が分かった私は

この年末年始の休みの間に出来るだけホールドを触って

指の皮を厚くしようと心に決めた。

 

そして年末年始の休み対策として

ネットショッピングのカートに入れていた

Nintendo Switchをそっと削除した私は

1年以上振りにクライミングジムの月パスを購入した。

 

2021年 年の瀬。

 

リハビリクライミングをする為のリハビリ生活が

幕を開けた。

 

 

EPISODE-30 心残り

週末。

 

年内最後のプール&懸垂10回チャレンジをすべく

気持ちは昂っていた。

 

来るべき戦いに備えエネルギーが必要と考えた私は

とりあえず菓子パンを買いに行こうと

玄関のドアを開けた。

 

 

 

さむっ

 

 

 

私はそっ…とドアを閉め

すっ…と布団に避難した。

 

そして

心地よいまどろみの中 私の週末は終わった。

 

プールのおじいちゃんおばあちゃん並びにお子様方

良いお年を。

 

 

さて

プールに行けなかったのは別に良いのだが

懸垂10回チャレンジだけは年内に行いたかった。

 

仕事中 隠れてグーグルアースを起動し

近所に懸垂出来そうな場所を探すが見当たらない。

 

懸垂出来そうな場所…

 

はっ…!

 

ライミングジムがあるじゃないか。

 

私は久しぶりにクライミングジムに行く事にした。