終点、池袋

フィクション交じりのノンフィクション

EPISODE-15 退院

11月1日。

V6が解散する日。

 

Very best

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とある病室のメンバーも解散を迎えていた。

 

「元気でな!」

「淋しくなるなー」

「もう帰ってくるなよー!」

 

 

なんて会話は1mmもなかった。

 

コロナ禍だからなのかは分からないが

病室メンバー達との関わりは一切なく

朝晩おならで挨拶するだけのドライな関係だった。

 

 

「くそお世話になりました」

 

心の中で告げた私は

振り返る事なく静かに病室を出た。

 

そして受付でお金をむしり取られた後

4日振りに世界へと飛び出した。

 

 

秋の風が私の頬を撫でる。

 

久しぶりに履いたスニーカーはどこか軽く

アスファルトを蹴ればどこまでも行けそうな気がした。

 

 

さて!

行くか!

 

 

私は迷う事なく

マクドナルドに向かって走り出した!! 


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EPISODE-14 山の音楽家

わたしゃおんがくか やまのこりす~

 

と言う曲を知っているだろうか?

 

山の音楽家

山の音楽家

 

山の音楽家 と言うタイトルのこの曲。

 

恐らく幼き頃に習ったのだと思うが

私にとっては聞き馴染みのある曲だ。

 

今回入院している病院では

どこかでナースコールが押されると

この山の音楽家のメロディが鳴る仕組となっている。

 

朝 昼 夜中

院内に絶え間無く鳴り響く山の音楽家

 

私が暮らしている4人部屋の同居人にも1人

ナースコールを使いこなす入院レベル虎の患者がいる。

 

 

わたしゃおんがくかやまのこりす~

 

「どうしました?」

「…帰りたい」

 

わたしゃおんがくかやまのこりす~

 

「どうしました?」

「…疲れた」

 

 

入院レベル虎ともなると

ナースコールをTwitter感覚で使っている。

恐るべし。

 

不自由ながらも3日振りの入浴を経てさっぱりした私。

 

いつもは気になる山の音楽家もあまり気にならず

久しぶりに長めの睡眠を取る事が出来た。

 

いよいよ退院である。

EPISODE-13 入院4日目

カテチンが解除され 点滴が解除され

無課金ノーマル状態へと近づいていく私。

 

残すは腕付近の血管から繋がれている

血抜きドレーンと呼ばれる物のみだった。

 

 

4日目の朝。

 

朝食を終え もう一眠りしようとした時だった。

 

ゴゴゴゴ…

 

カーテン越しに感じるただならぬ戦闘力。

 

シャーッ

 

後光ピカーッ

 

「どうも ニコッ」

 

やはり 院長だった。

 

実は私の担当医は院長であり

手術を薦めてくれたのも他ならぬ院長だった。

 

院長自らが血抜きドレーンを抜きに来て下さったのだ。

 

「痛かったら遠慮なく叫んで下さいね ニコッ」

 

また痛いのか…

 

「では…フンッ!」

 

ッッ!

 

「おや?声が出ませんねぇ ガッカリ」

 

フフフ…

確かに痛みは強く 入院前の私なら

間違いなく喚き散らしていたレベルだった。

 

だが尿道戦争を経て

私のMレベルは着実に上がっていたのだ。

 

もっとだ!

もっとくれ!

 

 

「それでは明日退院です。午後にお風呂も入れます」

 

風呂…。

言われて見れば3日間風呂に入っていない。

 

無事入れるのだろうか。

 

EPISODE-12 中忍試験

忍者とは忍び耐える者の事なんだよ-

 

 

漫画NARUTOの台詞である。

たぶん。

 

 

 

無限尿道カテーテル編に突入してからと言うもの

オチンメンは完全に忍び耐えていた。

 

ご飯→戦→お茶→戦→おやつ→戦→お茶→戦→…

 

度重なる排尿戦争により幾多の細胞が星になった。

 

そして

カテーテルを抜いてから24時間が過ぎた夜

 

ようやく痛みが鎮まった。

 

 

激しい戦いを乗り越えたオチンメンを眺め

よく頑張ったなと微笑む私。

 

 

 

オチンメン「いいってばよ」

 

 

入院前は下忍だったオチンメンは

すっかり立派な中忍となっていた。

 

 

余計な問題が片付き

いよいよ手術をした腕と向き合う事が出来そうだ。

 

 

EPISODE-11 入院3日目

丑三つ時に手術した腕の麻酔が切れ

ドクドクと脈打つような痛みが出てきた。

 

手術当日の夜はかなり痛むと噂で聞いていた。

確かに痛い。

 

しかしそれよりもチンロンの痛みの方が深刻だった。

 

結局ろくに眠れず3日目の朝を迎えた。

 

朝ごはんが運ばれる。


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写真はセピア色に加工しているわけではない。

元からシックな装いなのだ。

 

通常であればガッカリしそうな見た目なのだが

私はヨダレだらだら状態であった。

 

それもそのはず

普段 1日3,000キロカロリーくらい接種している私が

手術前日から絶食を強いられており

これが36時間振りのご飯なのである。

 

慣れない左手を使い獣のように食らう。

 

 

うまっ!

おかかのフリカケうまっ!

 

 

改めて食のありがたみを知った私は

窓から見える湘南の山々やケーズデンキに向かって

ごちそうさまと深く手を合わせた。

 

素晴らしい朝だ。

 

 

 

この時の私は知らなかった。

 

食事がはじまった事によりはじまる

尿道の痛みの連鎖をッッ!!

 

 

EPISODE-10 カテチン

全身麻酔下で手術の時間が2時間を越える場合

導尿カテーテルと言う尿をコントロールする管が

オチンロンに挿入されたりするらしい。

 

風の噂でそのような話も聞いてはいたが

まさか目が覚めても挿入中だとは思わなかった。

 

カテーテルを装備したカテチン状態は

青春を思わせるツンとした痛みと

ロマンスグレーを思わせる残尿感をmixした

非常に気持ち悪いものだったので

ナースに頼んで予定より早めに抜いてもらう事にした。

 

 

「痛いですよー」

 

 

ゴクリ…

 

 

「抜きますよー」

 

 

プギャァァァァァァ…

 

 

湘南に響く私の断末魔。

間違いなくここ数年で一番痛かった。

 

 

そのまま うずくまって寝てしまいたかったのだが

まだ変な尿意が残っていた。

 

最低一回は尿を出さないと眠れない事を悟った私は

意を決してトイレへと向かった。

 

まだ剣先がヒリヒリした状態のまま尿を試みる。

 

ギャァァァ

 

何と!

さっきと同じ激痛が尿が出てる間続く!

 

 

 

フゥーッ!フゥーッ!

 

深く呼吸をし意識を整える私!

 

 

フゥーッ!フゥーッ!

 

フゥーッ!フゥーッ!

 

 

ん?

 

この呼吸…

 

ライミングする時と一緒だ!

 

 

私のリハビリはもうはじまっていた!

EPISODE-9 入院2日目

「そろそろ行きましょうか」

 

コクリ

 

世界がおやつを楽しむ15時過ぎ

私は手術室に移動した。

 

ドラマや映画で見るような手術室そのままだ。

筋肉質な上半身をさらけ出しベッドに横たわる。

 

 

あれ?

この感情は…?

き、恐怖?

 

パワー系 強キャラな見た目とは裏腹に

心は気弱な子羊モードへと陥っていた。

 

手術室に入った瞬間 急に色々想像して怖くなる。

手術あるあるなのだろうか。

 

恐怖に怯えているのも束の間

準備は着々と進み 酸素マスクを装着させられる。

 

「それではだんだん眠くなりますよー」

 

先生の手品師のような台詞と共に

私の恐怖はより加速する!

 

麻酔が効かなかったらどうしよう!!

途中で起きたらどうしよう!!

二度と起きなかったらどうしよう!!

みんな今までありがとう!!

 

 

スピー

 

 

 

全身麻酔恐るべし。

 

目が覚めると私は病室にいた。

 

とりあえず手術は終わったのだとホッと一息つき…

 

 

!!?

 

一息つく間もなく!!

 

刺すような痛みが全身を駆け巡る!!

 

!!?

 

呼吸するたび痛む!?

 

!!!?

 

それも手術していないはずの下半身から!?

 

 

!!!!?

 

 

オ…オチ…ッッッ!

 

オチンロンに管が刺さってる!!!