EPISODE-26 思い立ったが吉日
とある休日の昼下がり。
家でゴロゴロしていた私は
何か今出来そうな運動はないかと思考を巡らせていた。
…
…
…はっ!!
数時間後 私は市営プールにいた。
ピタピタ水着 キツキツ帽子 食い込みゴーグル
施設を利用する為の3種の神器を現地で購入し
何年ぶりになるのか水中にその身を投じた。
まずはウォーキングコースに入り
人生のクライマックスを間近に控えた
諸先輩方の後に続き水中を歩いてみる。
想像していたより体感する負荷は低い。
水中を歩いているだけで運動になると言う話を聞くが
どこか物足りない。
ある程度歩いて体が暖まったのを確認した私は
片道25mの泳ぐコースへと移った。
…
何となく泳ぐコースに来ちゃったけど
泳げるほど腕は動かせるのか?
泳ぐの何年ぶりだ?
そもそも泳げるんだっけ?
思考を巡らせ立ち止まる私。
周りのロマンスグレー達から
「坊やはどれほど泳げるんだい?」
と言う視線を感じる。
早く泳ぎ出さないと後ろが詰まってしまう。
…ええいままよっ!
深く息を吸い込み 強く壁を蹴る。
何泳ぎをするのかも決めておらず
とにかく潜水したまま足を必死にバタバタさせる。
…
…?
気がつくと私は
腕を一切使わない人魚スタイルで
そのままゴールを迎えていた。
神奈川のアリエル誕生の瞬間だった。
25m息継ぎせず泳げた事に謎の達成感を感じ
気を良くした私はもう一度25mコースを泳いでみる。
ぷはっ!
2回目は20m手前くらいで息が続かなくなり失敗。
1回目と比べて明らかにスピードが落ちていた。
その後何度かチャレンジするものの
息継ぎするまでの距離はどんどん短くなっていった。
そう 私は時代遅れの喫煙者。
圧倒的に体力がないのだ。
25m潜水に成功する事は2度となかったが
実は息継ぎをした後に体が勝手に平泳ぎをしており
平泳ぎなら今の腕の状態でも出来る事が判明。
これはリハビリに良さそうな雰囲気である。
思いつきで行ってみたプールだったが
リハビリにもなりそうだし
塩素の匂いも プール上がりの脱力感も
ノスタルジーな感じで良かった。
気が向いたらまた行こうと思った。
ただ1つだけ後悔がある。
適当に手に取り買った水着が
信じられないくらいダサい事だ。