EPISODE-16 出勤
退院翌日。
貧しい私に休んでいる余裕などある訳もなく
早速出勤であった。
前日にストップウォッチを使い
朝の準備に何分かかるか入念なゲネプロを行い
準備は万全だった。
ちなみに通常時と比べて一番時間がかかる事は
コンタクトレンズを装着する事だった。
入念な準備の甲斐あって
無事遅刻する事なく会社にたどり着いた出来る私。
着くや否や同僚達からの
可愛い看護婦はいたのか サボりじゃないのか等の
セクハラ&パワハラの波状攻撃を華麗に捌きつつ
久しぶりのデスクへと着席した。
そしてご迷惑おかけしましたと言う意味を込めて
お菓子を配った。
近所で申し訳程度に適当に選んだお菓子だったのだが
これが引くほど好評だった。
ちがさき屋のタコせんべいと言う商品だ。
フロアで一番偉い部長からは
「めっちゃ旨い!左手も手術してまた買ってきて!」
と労基署に訴えても良いくらいの
お褒めの言葉をいただいた。
思いがけない形で出世コースに入る事が出来た私は
気を取り直し 溜まっている仕事を片付けようと
事務作業に入った。
バリバリ
ボリ
バリバリ
静寂の中 せんべいをかじる音が響き渡る社内。
仕事に集中出来る訳がなかった。