EPISODE-29 懸垂
週1程度でプールに通っている。
泳ぐ事が特別に楽しいわけではないが
初心者あるあるで少しずつ上達していく感じは楽しい。
通っているプールは駅から遠く
近くまでバスで行きそこから歩いているのだけど
ある日の帰り道
バス停に向かう途中で ふと公園を発見した。
バスが来るまで時間に余裕があったので寄ってみると
その公園は高齢の方向けの遊具が充実しており
中には補助付きの鉄棒のような物もあった。
…これはやるしかないのだろう。
恐る恐る慎重にぶら下がってみる。
腕に重力を預けるのは久しぶりだ。
ぶら下がってみた所
多少の違和感はあるものの嫌な傷みは感じない。
10秒程ぶら下がった所でゆっくりと懸垂をしてみる。
手術以前から
懸垂等のトレーニングは滅多にやらないので
ハッキリとは比較出来ないのだが
以前よりは辛いようには感じる。
しかし傷みなく懸垂が出来た。
懸垂10回出来たらクライミング復帰なのかなー
とか勝手に思っていたけど
その気になれば既に出来そうな気もした。
次回プールに来る時は
懸垂10回チャレンジをしてみようと思う。
EPISODE-28 久しぶりの診察
術後6週が経過したと言う事で久しぶりの診察だった。
対面するや否や
両腕の力こぶを見せてくれ と言う先生。
久しぶりの再会に興奮しているようだ。
…いいだろう。
上着を脱ぎ深呼吸。
本意気のフロントダブルバイセップスの型を取るっ!
パワー!
…
はーい、大丈夫です。
薄いリアクションに恥ずかしくなる私。
本来長頭腱が繋がっている場所よりは
やや下部に腱を固定しているので
若干ポパイの名残があるものの問題はないとの事。
次の診察は1ヶ月後となった。
その後 久しぶりのリハビリを受ける。
一通り状態を確認した後
初めて500グラムの鉄アレイを渡され
腕の屈伸をするよう指示を受ける。
か…軽い。
ほぼ何も感じない。
焦る必要はないが
リハビリに関しては注意事項は守りながら
自分で考えて行う方が良さそうだ。
リハビリの先生を否定しているわけではない。
クライミング再開までの期間や
再開後のクライミング能力回復の期間を短くする事を
考えるのであればと言う意味である。
とりあえず近々
クライミングに近いと噂の懸垂をやってみて
どれくらい出来ないのか様子をみたいものである。
EPISODE-27 師走チャンス
師走である。
師走とは僧侶のような落ち着いた人でも
走り回るように忙しい月であると言う意味から
生まれた言葉だと言う話を聞いた事がある。
確かに12月は
例年あっと言う間に過ぎ去っているような気がする。
手術後6週が経った。
体感では3ヶ月くらい前の出来事に感じるのに
まだ6週しか経っていないのか
と言うのが正直な気持ちである。
しかし
師走である。
あっと言う間に12月が過ぎ去ってくれれば
その時点で10週目に突入する。
ガチ筋トレ開始の目安は13週目からと言われており
ガチ筋トレさえ始まってしまえば
クライミングへの復帰も近いと勝手に思ってる。
上手く師走の波に乗り
12月をハイスピードで駆け抜けたいものである。
EPISODE-26 思い立ったが吉日
とある休日の昼下がり。
家でゴロゴロしていた私は
何か今出来そうな運動はないかと思考を巡らせていた。
…
…
…はっ!!
数時間後 私は市営プールにいた。
ピタピタ水着 キツキツ帽子 食い込みゴーグル
施設を利用する為の3種の神器を現地で購入し
何年ぶりになるのか水中にその身を投じた。
まずはウォーキングコースに入り
人生のクライマックスを間近に控えた
諸先輩方の後に続き水中を歩いてみる。
想像していたより体感する負荷は低い。
水中を歩いているだけで運動になると言う話を聞くが
どこか物足りない。
ある程度歩いて体が暖まったのを確認した私は
片道25mの泳ぐコースへと移った。
…
何となく泳ぐコースに来ちゃったけど
泳げるほど腕は動かせるのか?
泳ぐの何年ぶりだ?
そもそも泳げるんだっけ?
思考を巡らせ立ち止まる私。
周りのロマンスグレー達から
「坊やはどれほど泳げるんだい?」
と言う視線を感じる。
早く泳ぎ出さないと後ろが詰まってしまう。
…ええいままよっ!
深く息を吸い込み 強く壁を蹴る。
何泳ぎをするのかも決めておらず
とにかく潜水したまま足を必死にバタバタさせる。
…
…?
気がつくと私は
腕を一切使わない人魚スタイルで
そのままゴールを迎えていた。
神奈川のアリエル誕生の瞬間だった。
25m息継ぎせず泳げた事に謎の達成感を感じ
気を良くした私はもう一度25mコースを泳いでみる。
ぷはっ!
2回目は20m手前くらいで息が続かなくなり失敗。
1回目と比べて明らかにスピードが落ちていた。
その後何度かチャレンジするものの
息継ぎするまでの距離はどんどん短くなっていった。
そう 私は時代遅れの喫煙者。
圧倒的に体力がないのだ。
25m潜水に成功する事は2度となかったが
実は息継ぎをした後に体が勝手に平泳ぎをしており
平泳ぎなら今の腕の状態でも出来る事が判明。
これはリハビリに良さそうな雰囲気である。
思いつきで行ってみたプールだったが
リハビリにもなりそうだし
塩素の匂いも プール上がりの脱力感も
ノスタルジーな感じで良かった。
気が向いたらまた行こうと思った。
ただ1つだけ後悔がある。
適当に手に取り買った水着が
信じられないくらいダサい事だ。
EPISODE-25 TUBE
前回の診察の後
私は100円ショップダイソーに訪れていた。
リハビリで使うようなトレーニングチューブが
ダイソーに売っていると言う情報を得た為だ。
店内を探すと
売れているのかそもそも在庫が少ないのか
ソフト・ミドル・ハードの3種類のチューブが
それぞれ1点だけ置いてあった。
どれにしようかと30秒程迷った結果
100円だし別にいっか…と言う
ダイソーの思うツボパターンで3種類全部買った。
帰宅後とりあえず一番弱いソフトレベルのチューブを
開封してみる。
思っていたより短い。
そして短いのでソフトでもそれなりの強度を感じる。
むむ…
ちょっとだけやってみたい…
リハビリの先生からは
負荷をかける事はまだ禁じられている。
ここは我慢だ。
…
と言うわけで
その日からチューブを使ったリハビリを開始した。
EPISODE-24 リハビリ1-4
術後3週間ちょっと。
退院後2回目の診察だった。
経過は順調との事。
先生との関係も少しずつ友達みたいになってきており
笑いの数も増えてきた。
最後の診察時に
X JAPANのForever Loveが流れる中
「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!」
「ありがとうございます!」
と抱き合う難易度Eのエンディングルートに
入ったのかも知れない。
そしてついに三角巾が解除された。
会社で人に会うたびに
「いつ取れるの?ニヤニヤ」
「3週間後です(もう!興味ないくせにっ…!)」
と言うやり取りが面倒だったのでありがたい。
診察後リハビリを行い こちらも順調との事で
次は3週間後との事だった。
今まで週1で通っていたので若干見放された感はあるが
恐らく経過が順調だからだろう。
まぁ順調と言うか
隠れてフライングストレッチをしているので
可動域がほぼ復活しているからやる事がないのだろう。
ただ負荷をかけたリハビリはまだ先との事なので
引き続きストレッチに励む所存だ。
数年前の自分であれば
もう軽くクライミングしてみたりしそうなのだが
そんな気は全く起きていない。
大人になったものだ。
行儀よく真面目なんて出来やしなかった
あの頃の自分はもういない。